メタルズビジョン貴金属ニュースセンチメント・マクロ分析

by tas

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金 週次レポート ▸ 2026-W09 (2/23〜2/27) 日本語 PDF English PDF

金は最高値圏でもまだ過熱していない。ドル安と実質金利低下が支える「静かな強気」

① 今週の一言要約

ドル安と実質金利の低下が追い風となり、金は週間でしっかり上昇した。一方で投機筋の持ち高やニュースセンチメントはまだ過熱しておらず、強いが熱狂し切っていない相場に見える。

② 価格動向とチャート振り返り

今週の金スポットは Stooq 系列の終値ベースで、2026-02-23 の 5109.8 から 2026-02-27 の 5249.835 まで上昇し、週間騰落率は 2.7405% だった。週中高値は 5257.305、安値は 5095.085 で、値幅は 162.22、始値対比では 3.1747% に達した。週末にかけて高値圏を維持し、押し目が入っても買い戻される流れが続いた。

相場の荒さは顕著だ。20日移動ボラティリティ(年率)は 40.2135% に達しており、これは過去3年で 97.41 パーセンタイルに相当するかなり高い水準である。乱高下しつつも下値が切り上がる、強いモメンタムを伴った上昇と見た方が実感に近い。直近3か月では 24.0651%、1年では 83.8857% 上昇しており、押し目で買いが入りやすい地合いも維持されている。

Gold/Silver Ratio (Stooq EOD close)

Source: Stooq end-of-day spot close series (xauusd / xagusd).

他資産との相対評価を見ると、金銀比は 56.2979 と低めの水準にあり、銀も含めた貴金属全体に資金が向かいやすい環境が続いている。一方、金原油比は 78.7764 で、過去3年では 98.25 パーセンタイルの極めて高い水準だ。実体経済のエネルギー価格に対して、金がかなり強く買われていることを示している。

③ 機関投資家の動き

CFTC COT の最新は 2026-02-17 時点で、マネーマネジャーのネットロングは 95893、前週比では 3871 増だった。ロング 123011、ショート 27118、建玉 407078 という組み合わせで、買い越しそのものは続いている。ただし水準感はかなり落ち着いている。ネットポジションは過去3年で 27.1 パーセンタイルにとどまり、価格が高値圏にあるのに比べると、先物のポジションはまだ伸び切っていない。

このねじれは重要だ。価格の強さに対して投機筋の積み上がりが薄いので、極端なロング偏重相場というより、マクロ要因を見ながら資金が遅れて追随している形に見える。来週以降、価格上昇に COT が追いつくならトレンドは持続しやすい。逆に価格だけが先行し、ネットロングが増えないままなら、現物や ETF のフロー主導で振れ幅がさらに大きくなりやすい。参考までに、QQQ に対する 60 日ベータは 0.5408、252 日ベータは 0.0474 で、短期は株と同方向に揺れても、中長期では分散先として扱われやすい。

④ マクロ要因チェック

マクロの追い風はかなり明確だ。DXY は 117.9917 で、3か月で 2.4751% 下落、1年で 8.0205% 下落しており、ドル建て金には追い風になりやすい。米10年金利は 4.05%、実質金利 proxy は 1.77% で、金に逆風になりやすい実質金利が低位にある点は今週の上昇と整合的だ。期待インフレを映す 10 年 BEI は 2.28% で、極端なインフレ再加速というより中庸の位置にある。

一方で、安心感だけの相場でもない。VIX は 18.63 まで上がっており、株式市場にはまだ警戒感が残る。トップトピックでも AI 普及懸念による米株安や米イラン対立が並んでおり、逃避需要の物語はまだ崩れていない。金が買われている背景は、インフレ再燃というより「ドル安と実質金利低下、そこにリスク回避が重なった構図」と整理するのが自然だ。

Key Macro Tracker

⑤ 需給とセンチメント

今週の金関連記事は 30 件。上位タグは金融、企業、需給、投資フロー、政策で、テーマは価格そのものより資金の向きと需給の変化に寄っていた。ニュースセンチメントスコアは、生スコア平均では 1.3033 とプラスだが、主指標に使う補正後センチメントの週平均は -0.602、最新値も -0.31 でまだマイナス圏にある。単純な悲観一色というより、長期平均を差し引いたあとではニュースの盛り上がりがまだ過熱圏に達していない、という理解が近い。2/24 に -0.83 まで悪化したあと、2/27 には -0.31 まで戻しており、センチメントは改善中だが熱狂には遠い。

Google Trends 3M (gold price)

Source: Google Trends daily 3-month series (gold price).

需給面では、中国の1月の香港経由純輸入がほぼ 69% 増という話題が入り、現物需要の底堅さを補強した。Google Trends も急騰局面というより、関心の底上がりを示している。検索語 gold price の1年系列最新値は 31 で、1年前比では 93.75% 高い一方、水準としては過去1年 46.15 パーセンタイルの中位圏にある。個人投資家の関心は去年より高いが、まだ熱狂的なブームではない。

Precious Metals Combined Sentiment Score Trend

⑥ 今週の洞察と来週の注目ポイント

今週の金でいちばん面白いのは、「価格は強いのに、ポジションとセンチメントはまだ熱くない」という点だ。価格は高値圏にある一方、COT ネットロングは過去3年で見ても中位以下、補正後センチメント週平均も -0.602 にとどまる。これはバブル終盤というより、マクロ主導で価格が先行し、参加者の確信がまだ追いついていない局面に近い。強い相場だが、陶酔ではない。

来週見るべき点は三つある。ひとつ目はドルと実質金利だ。DXY の下落と実質金利 proxy 1.77% の低位が続くなら、金の上昇シナリオは維持されやすい。ふたつ目は COT で、ネットロング 95893 が明確に積み上がるなら、機関投資家の追随が確認できる。逆に伸びないなら、価格だけが走る脆い上昇として押しが深くなりやすい。三つ目は大衆の関心だ。Google Trends の1年系列がさらに切り上がり、最新センチメント -0.31 がゼロ近辺に戻るなら、相場の主役がマクロ防衛から広い投資フローへ移る可能性がある。条件付きで言えば、週初の 5109.8 を明確に割らず、金原油比の高止まりが続く限り、来週も金は「守りの買い」で選ばれやすい。

(※本レポートのデータ詳細および最新のチャート分析については metalsvision.com もご確認ください。)

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