金は2週続落でも高値圏を維持。実質金利低下と非過熱COTが示す「調整優勢の強気」
① 今週の一言要約
金は週間で下げたが、価格水準は依然として高く、機関ポジションも過熱していない。短期は調整モードでも、ドル安と低い実質金利という土台は残っており、「上昇トレンドの中の押し目」か「調整の深掘り」かを見極める局面に入った。
② 価格動向とチャート振り返り
今週の金スポットは Stooq 系列の終値ベースで、2026-03-09 の 5130.46 から 2026-03-13 の 5019.83 まで下落し、週間騰落率は -2.1563% だった。週中高値は 5238.45、安値は 5009.83、値幅は 228.62 で、始値対比の週間レンジは 4.4561% と大きい。終値は週初を下回ったが、5000近辺では下げ渋りも見られ、一本調子の崩れというより高値圏での調整色が強い。
ボラティリティはまだ高い。20日移動ボラティリティ(年率)は 27.8699% で、過去3年では 90.43 パーセンタイルに位置する。一方で終値水準は過去3年 97.15 パーセンタイル、過去1年でも 91.44 パーセンタイルと高位を維持している。3か月騰落率は 16.5921%、1年騰落率は 68.1660% で、週次の下落はトレンド反転よりも、上昇後のスピード調整として解釈しやすい。

Source: Stooq end-of-day spot close series (xauusd / xagusd).
相対価格も確認しておく。金銀比は 62.2808 で、過去3年では 6.08 パーセンタイルと低位圏だが、前週比では 1.3965% 上昇しており、今週は銀より金がやや強かった。金原油比は 54.2416 で、前週比 -4.4584%。WTI 急騰の影響で比率は低下したが、水準自体は過去3年 82.46 パーセンタイルとまだ高めにある。
③ 機関投資家の動き
CFTC COT の最新は 2026-03-10 時点で、マネーマネジャーのネットロングは 98399、前週比では 482 増だった。ロング 125077、ショート 26678、建玉 413956 で、ポジションは小幅な積み増しにとどまる。価格が高値圏にある割に、ネットポジションの水準感は過去1年で 15.38 パーセンタイル、過去3年で 28.21 パーセンタイルと低い。
この「価格高止まりに対して投機は過熱していない」という構図は、相場の脆さを抑える材料でもある。需給がロング過密ではないため、急落の引き金となる投げ売り連鎖は起きにくい一方、明確な上昇再開には追加の買い手が必要という状態だ。なお、QQQ に対する 60 日ベータは 0.5408、相関は 0.2250。252 日ベータは 0.0474、相関 0.0438 で、中長期では株式との連動はかなり小さい。
④ マクロ要因チェック

マクロの芯は、依然として金に大きく逆風ではない。DXY は 119.491(最新 2026-03-06)で、3か月 -0.3877%、1年 -4.9352%。実質金利 proxy(米10年名目 - 10年 BEI)は 1.78%(2026-03-09)で、3か月 -7.7720%、1年 -11.4428% と低下基調が続く。米10年名目金利も 4.12% へ小幅低下しており、保有コスト面では金に追い風が残る。
ただし今週は、原油高と高ボラ環境が重なった点に注意が必要だ。WTI は 94.65 ドル(2026-03-09)で、3か月 +66.1401%、過去3年 100 パーセンタイルの極端な高水準。VIX は 24.93(2026-03-10)と過去3年 96.49 パーセンタイルで不安心理は強い。通常なら安全資産として金に資金が向かいやすい環境だが、今回はインフレ懸念と利益確定売りが勝ち、価格は上値を抑えられた。
⑤ 需給とセンチメント

今週の金関連記事は 35 件。上位タグは企業、金融、投資フロー、需給、地政学で、話題は「リスクオフ」「資源コスト」「供給サイド」の混在だった。トピック面では、AI 普及警戒による米株全面安が継続して言及される一方、ジェフリーズによる「高油価が露天掘り金鉱山に重荷」という見方や、地域別投資資金配分の話題が目立った。
センチメントは週平均で小幅プラスだが、終盤にかけて鈍化した。補正後センチメントの週平均は 0.0443、最新値は -0.02。日次では 3/9 の 0.46 から 3/13 の -0.25 まで低下しており、価格下落と歩調を合わせて心理も冷えている。生スコア系は依然プラス圏だが、方向性としては「強気一辺倒」から「様子見」に移った週だった。
個人関心もやや沈静化している。検索語 gold price の最新値は、3か月系列で 18、1年系列で 29。1年系列は前週比 -17.1429% で、過去3年パーセンタイルも 44.64 と中位圏。前週までの関心拡大に比べると、今週は「高値警戒による見送り」が増えたと読むのが妥当だ。
⑥ 今週の洞察と来週の注目ポイント
今週のポイントは、「価格の調整は進んだが、構造要因はまだ崩れていない」に尽きる。価格は -2.1563% 下落した一方、実質金利の低下・ドルの弱含み・非過熱の COT という中期サポートは残存した。相場は弱くなったというより、上昇相場の次段に向けた再評価フェーズに入っている。
先週の注目点を振り返ると、第一の DXY と実質金利は想定通り金の支えとして機能した。第二の「高 VIX が金買いに再接続するか」は未達で、VIX 高止まりにもかかわらず価格は下落した。第三の検索需要とニュースセンチメントは、前週より明確に弱含んだ。つまり、マクロ支援は残りつつも、フロー面の推進力が一段落したのが今週の実像だ。

Source: Google Trends daily 3-month series (gold price).
来週の観測点は四つ。第一に、実質金利 1.78% と DXY 低位が維持されるか。ここが崩れなければ、5000近辺は押し目買いの候補として意識されやすい。第二に、COT ネットロング 98399 が増勢に転じるか。価格反発とポジション拡大が同時に起きれば、トレンド継続の確度が上がる。第三に、WTI 高騰の継続有無だ。原油高がさらに進むとコスト・インフレ懸念経由で金の上値が抑えられやすい。第四に、センチメントと検索需要の底入れ確認である。補正後センチメントが再びプラス域を回復し、Google Trends が切り返すなら、今週の下落は短期調整で終わる可能性が高い。逆に、価格が 5000 を明確に割り込み、センチメントもマイナスで固定化するなら、調整がもう一段深まるシナリオには注意したい。